アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス合作のドキュメンタリー映画『ぼくたちの哲学教室』

北アイルランド、ベルファストにあるホーリークロス男子小学校。ここでは「哲学」が主要科目になっている。哲学の授業を担当するのは、柔術の黒帯を持ち、エルヴィス・プレスリーが大好きなケヴィン・マカリーヴィー校長先生だ。

“哲学”と言っても難しい話をするわけではない。ケヴィン校長は、例えば生徒たちに「他人に怒りをぶつけてもよいか?」と質問する。それに対して生徒たちはそれぞれ、賛成、反対の立場で自分たちの意見を述べる。また、「目を閉じて好きな場所を浮かべてそこにいる自分を想像して」との問いかけに、「宇宙」と答える生徒いれば、「マクドナルド」と答える生徒も。テーマはネット上のいじめ問題だったり、校内で起こったケンカについてだったりと 、生徒たちにとって身近なことばかりだ。

高学年はもちろん、まだあどけなさを残す低学年の生徒たちも、問いかけに対して真剣に考え、自分の言葉で伝え、級友たちと意見を交わす。

そして、ケヴィン校長は「同じものを見ても人によって受け止め方は違う。それが哲学の面白さだ。考え方は色々ある。自分と違う人の意見に耳を傾けることで、自分の意見も変わる。絶対正しい意見はない」と説く。

北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの街には宗教的、政治的対立の記憶と分断がいまだに残っている。

ケヴィン校長は、その激動の時期に自らの拳で自分や親しい人々を守ってきた経験に自責の念を抱いている。そして生徒たちが、人生において何が起きても対処できるよう感情をコントロールし、抵抗する力を身につけることを願って、哲学を教えているのだ。

哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長の大いなる挑戦を2年間にわたり記録し、映画化したのは、アイルランドで最も有名なドキュメンタリー作家のナーサ・ニ・キアナンと、ベルファスト出身のデクラン・マッグラの二人。
本作は、第49回日本賞(NHK)の一般向け部門で「最優秀賞(東京都知事賞)」、第18回アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞で「最優秀⻑編ドキュメンタリー賞」などを受賞した。

監督:ナーサ・ニ・キアナン、デクラン・マッグラ
出演:ケヴィン・マカリーヴィーとホーリークロス男子小学校の子どもたち

日本語字幕:吉田ひなこ
字幕監修:西山渓 
後援:駐日アイルランド大使
配給:doodler
2021/アイルランド・イギリス・ベルギー・フランス/英語/102分/カラー/16:9/5.1ch/ドキュメンタリー 原題:Young Plato


© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin dʼoeil films, Zadig Productions,MMXXI

2023 年 5 月 27 日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー

公式サイト https://youngplato.jp

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