フランス人哲学者バティスト・モリゾ著『動物の足跡を追って』

著者のバティスト・モリゾは、南仏出身の哲学者。自然と人間を切り離して考える西洋的な自然主義に違和感を覚え、フィールドワークを主体とする動物の「追跡」を行っている。それは、足跡や痕跡から動物たちの意図や習慣を読み解き、動物の目と感覚を通して世界を観る行為である。

本書では、著者の追跡の記録とそれに伴う哲学的思索が語られる。追跡の対象はアメリカ西部、イエローストーン国立公園近くに棲息するグリズリー(灰色熊)やキルギス共和国の高原のユキヒョウだったり、と冒険譚のような面白さがある。その一方で、自宅の台所に置かれたコンポスト容器内のミミズを「追跡」し、新たな世界観を導き出すような哲学書らしさもある。

人間は生物共同体の一員なのだ、ということにあらためて気付かされ、他の生物たちとの関係性、共生について考えさせられる一冊だ。

『動物の足跡を追って』
バティスト・モリゾ 著
丸山亮 訳
発行所:新評論

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